相続した家や土地について家族で話し合い、
「誰も住む予定がないので売却しよう」
「空き家として持ち続けるより、売却したい」
と方向性が決まっても、実際に何から始めればよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
相続不動産の売却は、一般的な不動産売却と基本的な流れは同じですが、相続人の確認や相続登記など、売却前に確認しておきたいことがあります。
また、不動産会社から提示された査定価格だけで判断するのではなく、売出価格、販売方法、売却までの期間、必要な費用、最終的な手残りまで整理して進めることも大切です。
この記事では、相続した家や土地を売却すると決めた方に向けて、査定から売買契約、決済・引渡しまでの流れを順番にわかりやすく解説します。
相続不動産を売却するまでの大まかな流れ
相続した不動産を売却する場合、おおまかには次のような流れで進みます。
- 相続人と不動産の名義を確認する
- 物件の状態や必要書類を整理する
- 不動産会社へ査定を依頼する
- 売出価格や販売方針を決める
- 媒介契約を締結する
- 販売活動を開始する
- 購入申込み・条件交渉を行う
- 売買契約を締結する
- 決済・引渡しの準備をする
- 売買代金の決済・物件の引渡しを行う
- 売却後の税金や確定申告を確認する
物件や相続の状況によって順番が前後することもありますが、まずは全体像を把握しておくと進めやすくなります。
STEP1|相続人と不動産の名義を確認する
最初に確認したいのが、誰が相続人なのか、そして現在の不動産の名義が誰になっているのかという点です。
親が亡くなった後も登記名義が親のままになっている場合には、相続登記が必要になります。
相続した不動産を買主へ引き渡して所有権を移転するためには、売主となる相続人への相続登記を行う必要があります。
兄弟など相続人が複数いる場合には、遺産分割によって誰が不動産を取得するのかを整理する必要があるケースもあります。
まずは、
- 相続人は誰か
- 遺言書はあるか
- 遺産分割は済んでいるか
- 登記簿上の所有者は誰か
- 相続登記は済んでいるか
などを確認してみましょう。
相続登記の期限や義務化については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続登記はいつまで?義務化と2027年3月31日の期限をわかりやすく解説」
相続登記の具体的な手続きについては、司法書士へ相談するとよいでしょう。
STEP2|物件の状態や必要になりそうな資料を整理する
次に、売却する不動産について分かる範囲で情報を整理します。
たとえば戸建てや土地であれば、
- 登記関係の資料
- 固定資産税の納税通知書
- 購入時の売買契約書
- 建築確認関係の資料
- 測量図や境界に関する資料
- リフォーム・修繕の履歴
などが残っていないか確認してみましょう。
マンションであれば、
- 管理費・修繕積立金
- 管理規約
- 駐車場や駐輪場の利用状況
- リフォーム履歴
なども売却時の確認材料になります。
すべて揃っていなくても査定相談はできますので、「書類がないから相談できない」と考える必要はありません。
まずは手元に何があるのかを確認しておく程度で大丈夫です。
STEP3|不動産会社へ査定を依頼する
売却の方向性が決まったら、不動産会社へ査定を依頼します。
査定では、
- 周辺の取引事例
- 土地や建物の状態
- 築年数
- 立地
- 接道状況
- マンションの場合は階数や向き
- 現在の不動産市場
などを確認しながら、売却価格の目安を検討していきます。
ここで注意したいのが、査定価格と実際に売れる価格は同じではないということです。
査定価格はあくまで売却価格を検討するための材料の一つです。
不動産会社を選ぶ際には、単純に一番高い査定額を出した会社を選ぶのではなく、
- なぜその査定価格になるのか
- いくらで売り出すのか
- どのように販売するのか
- どのくらいの期間を想定しているのか
- 売れなかった場合はどうするのか
まで確認することが大切です。
STEP4|売出価格と販売戦略を決める
査定結果を確認したら、実際の売出価格を決めていきます。
ここは不動産売却で特に重要な部分です。
たとえば査定価格が3,500万円だったとしても、必ず3,500万円で売り出すとは限りません。
物件の条件や周辺の競合状況、売主様の希望する売却時期などを考えながら、
- 最初はいくらで売り出すか
- どのくらいの期間その価格で販売するか
- 反響が少なかった場合はどうするか
- 価格を変更する場合はいつ判断するか
- 値下げ交渉にはどこまで対応するか
などを決めていきます。
「査定額を聞くこと」と「売却戦略を決めること」は別の話です。
売却を成功させるためには、価格だけではなく、販売方法や期間まで含めて考えることが重要です。
和継プランニングでは、相続・空き家についてのご相談に加えて、売却する方向性が決まった方に向けた売却専門の不動産売買仲介サービスにも対応しています。
査定価格だけを提示するのではなく、売出価格、販売戦略、売却までの期間、価格変更の考え方、必要な費用、最終的な手残りまで整理しながら売却を進めます。
STEP5|不動産会社と媒介契約を締結する
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社へ売却活動を依頼するための契約です。
主な種類には、
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
があります。
それぞれ契約内容や売主側の制約、不動産会社側の義務などが異なります。
「専任が必ず良い」「一般媒介が必ず良い」というものではないため、それぞれの違いについて説明を受け、ご自身の売却方法に合った契約を選びましょう。
STEP6|販売活動を開始する
媒介契約を締結したら、購入希望者を探す販売活動が始まります。
具体的な販売方法は不動産会社によって異なりますが、
- 不動産会社間の物件情報共有
- 購入希望者への紹介
- 不動産ポータルサイトへの掲載
- 自社ホームページへの掲載
- チラシなどによる広告
などがあります。
売却を依頼した会社だけで買主を探すとは限りません。
不動産会社同士で情報を共有し、他社が抱えている購入希望者から買主を探すことも一般的です。
販売開始後は、問い合わせ件数や内覧状況、購入希望者からの反応などを確認しながら、現在の販売方法が適切なのかを見ていきます。
STEP7|購入申込みと条件交渉
購入希望者が見つかると、購入申込みが入ります。
申込みでは、
- 購入希望価格
- 契約希望日
- 引渡し希望日
- 住宅ローン利用の有無
- その他の希望条件
などが提示されることがあります。
特に多いのが価格交渉です。
たとえば3,500万円で売り出している物件に対して、
「3,400万円なら購入したい」
という申込みが入ることもあります。
このときも、単純に「100万円値引きするかどうか」だけで考えるのではなく、
- 販売開始からどのくらい経過しているか
- これまでどのくらい問い合わせがあったか
- 他に購入を検討している人がいるか
- 売主側の希望する売却時期
なども踏まえて判断します。
STEP8|売買契約を締結する
売主と買主の条件がまとまったら、売買契約を締結します。
売買契約では、
- 売買代金
- 手付金
- 決済・引渡し日
- 契約解除に関する条件
- 設備や建物の状態
- その他の売買条件
などを確認します。
一度契約すると簡単に条件を変更できるものではないため、内容について分からないことがあれば、契約前に確認しておくことが大切です。
STEP9|決済・引渡しに向けて準備する
売買契約から決済・引渡しまでは、数週間から一定期間空くことが一般的です。
その間に、物件によっては、
- 荷物や残置物の撤去
- 境界に関する確認
- 必要な登記手続き
- 住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消準備
- 買主へ渡す書類や鍵の準備
などを進めます。
相続した実家の場合には、家具や家財、思い出の品が多く残っているケースもあります。
売却を始める前にすべて処分する必要はありませんが、最終的にどこまで片付ける必要があるのかは、早めに確認しておくと安心です。
STEP10|売買代金の決済・物件の引渡し
決済日には、買主から残りの売買代金を受け取り、所有権移転登記などの手続きを行い、物件を引き渡します。
必要な費用についても精算し、鍵や関係書類などを買主へ渡します。
これで不動産そのものの売却手続きは、ひとまず完了となります。
売却価格がそのまま売主の手元に残るわけではありません。
状況によって、
- 仲介手数料
- 登記関係の費用
- 測量費
- 解体費
- 残置物撤去費
- 税金
などがかかる場合があります。
そのため、売却を検討する段階から、「いくらで売れるか」だけではなく「最終的にいくら残るのか」まで確認しておくことが大切です。
STEP11|売却後の税金・確定申告も確認する
相続した不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得として所得税・住民税の対象になることがあります。
譲渡所得は単純に「売却価格=利益」として計算するわけではありません。
基本的には、売却による収入から、取得費や売却にかかった一定の費用などを差し引いて計算します。
また、相続した土地や建物については、原則として被相続人が取得したときの取得費や取得時期を引き継いで計算します。
相続税を支払っている場合や、一定の要件を満たす相続不動産を売却する場合には、税負担に関係する特例が利用できるケースもあります。
税金は個別の状況によって大きく異なるため、売却前または売却後に税理士などへ確認すると安心です。

査定価格だけで不動産会社を選ばないことも大切
不動産売却を検討すると、複数の会社から査定を取ることもあると思います。
その際、
A社:3,300万円
B社:3,500万円
C社:3,800万円
という査定結果が出れば、3,800万円の会社に依頼したくなるかもしれません。
しかし、査定価格は不動産会社が物件を買い取る金額ではありません。
大切なのは、
- 査定価格の根拠は何か
- 実際にはいくらで売り出すのか
- その価格でどのくらいの期間販売するのか
- どのような方法で購入希望者を探すのか
- 反響が少ない場合はどうするのか
- どのくらいの費用がかかるのか
- 最終的な手残りはいくらになりそうか
まで確認することです。
「高い査定額を出した会社」ではなく、「その金額をどう実現しようとしているのかを説明できる会社」かどうかも確認してみましょう。
まだ売却すると決めていない場合は?
ここまで売却の流れをご紹介しましたが、相続した家を必ず売却しなければならないわけではありません。
相続した家には、
- 自分や家族が住む
- 賃貸に出す
- 一定期間残しておく
- 売却する
などの選択肢があります。
まだ方向性が決まっていない場合には、売却手続きを進める前に、それぞれのメリットや負担を比較するところから始めても問題ありません。
売る・貸す・残すの判断ポイントについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
「相続した家は売る?貸す?残す?判断するときの7つのポイント」
相続不動産の売却を検討している方へ
和継プランニングでは、相続・空き家についてのご相談だけでなく、不動産売却専門の売買仲介サービスを行っています。
相続した家を売却する場合にも、単に査定価格を提示するだけではなく、
- 現在の不動産の状況
- 売出価格
- 販売戦略
- 売却までの想定期間
- 価格変更を検討するタイミング
- 売却に必要な費用
- 最終的な手残りの見込み
まで整理しながら売却を進めます。
また、相続登記や遺産分割、税務など専門的な手続きが必要な場合には、内容に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家との連携も行います。
「相続した実家を売却したい」
「まずはいくらくらいで売れそうか知りたい」
「売却する場合の費用や手残りまで確認したい」
という方は、売却専門ページをご覧ください。
まとめ|相続不動産の売却は、全体の流れを整理してから進めましょう
相続した不動産の売却は、大きく分けると、
- 相続人・名義を確認する
- 物件の状況を整理する
- 査定を受ける
- 売出価格・販売戦略を決める
- 媒介契約を締結する
- 販売活動を行う
- 購入条件を調整する
- 売買契約を締結する
- 決済・引渡しを行う
- 売却後の税金を確認する
という流れで進みます。
特に相続不動産では、売却活動を始める前に相続関係や登記の状況を確認しておくことが重要です。
また、売却を依頼する会社を選ぶときには査定額だけを見るのではなく、「いくらで、どのように、どのくらいの期間で売るのか」「費用を差し引いていくら残るのか」まで確認してみましょう。
和継プランニングでは、売主様の状況や希望を整理しながら、不動産売却の最初の相談から査定、販売、交渉、契約、決済・引渡しまで一貫して対応しています。
※本記事は2026年9月時点の法令・制度および一般的な不動産取引の流れをもとに作成しています。実際に必要となる手続きや書類、税金等は、不動産や相続の状況によって異なります。具体的な法律判断については弁護士、登記手続きについては司法書士、税務については税理士などの専門家へご確認ください。
この記事を書いた人
和継プランニング 代表 宮澤 和希
宅地建物取引士/FP2級・AFP
不動産会社で不動産売却のご相談や売買仲介業務に携わってきた経験をもとに、相続不動産・空き家・不動産売却について、一般の方にもわかりやすい情報発信を行っています。
「売ること」だけを前提にせず、ご家族の状況や今後の希望を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携し、解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
