
親から実家を相続したものの、
「すぐに住む予定はない」
「売るか残すかまだ決めていない」
「とりあえず空き家のまま持っておこう」
という方も少なくありません。
ただ、家は誰も住んでいなくても、所有しているだけでさまざまな費用がかかります。
固定資産税だけでなく、火災保険、庭木の手入れ、修繕、定期的な換気や清掃、遠方にある場合の交通費なども考えておく必要があります。
この記事では、相続した実家を空き家として所有する場合に、どのような維持費がかかるのかをわかりやすくご紹介します。
「売る・貸す・残す」を判断する前に、まずは所有を続けた場合の負担を整理してみましょう。
空き家は「使っていなくてもお金がかかる」
誰も住んでいない家を見ると、
「使っていないのだから、それほど費用はかからないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、空き家でも所有者である以上、次のような費用が発生する可能性があります。
- 固定資産税などの税金
- 保険料
- 建物の修繕費
- 庭や敷地の管理費
- 水道・電気などの費用
- 空き家を確認するための交通費
- 管理を委託する場合の費用
国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」では、空き家の年間維持管理費について、10万円以上20万円未満と回答した割合が最も高く、20万円以上かかっているケースも一定数あります。
もちろん、実際にかかる金額は家の大きさや築年数、立地、管理方法によって大きく異なります。
「空き家なら年間○万円」と一律に考えるのではなく、自分の実家では何にいくらかかっているのかを確認することが大切です。

まず考えたいのが固定資産税
空き家であっても、不動産を所有していれば原則として固定資産税がかかります。
地域や土地・建物の評価額によっては都市計画税もかかります。
固定資産税は毎年発生するため、空き家を何年も所有する場合には、長期的な負担として考えておく必要があります。
住宅が建っている土地には税負担を軽減する仕組みがあります
住宅が建っている土地については、「住宅用地の特例」という固定資産税の負担を軽減する制度があります。
小規模住宅用地では、200平方メートル以下の部分について、固定資産税の課税標準が原則として6分の1になります。200平方メートルを超える部分についても一定の軽減があります。
そのため、
「古い家なら壊して更地にした方が管理が楽そう」
と思っても、解体後は土地の税負担が変わる可能性があります。
解体するかどうかは、建物の状態だけでなく、固定資産税や土地の利用方法、売却予定なども含めて考えることが大切です。
管理状態が悪いと固定資産税の軽減措置を受けられなくなることも
「空き家でも建物が残っていれば、ずっと住宅用地の特例を受けられる」
とは限りません。
適切な管理が行われておらず、このまま放置すると「特定空家等」になるおそれがある空き家は、「管理不全空家等」として市区町村から指導や勧告を受けることがあります。
そして、市区町村から勧告を受けた管理不全空家等や特定空家等の敷地については、住宅用地の固定資産税の軽減措置が受けられなくなることがあります。
つまり、
「空き家を放置している方が安く済む」
とは限りません。
使う予定が決まっていなくても、最低限の管理は続けておく必要があります。
火災保険・地震保険などの保険料
実家を空き家として所有する場合には、保険についても確認しておきましょう。
建物が空き家になることで、現在加入している火災保険の契約条件が変わったり、そのまま継続できない場合もあります。
また、
- 火災
- 台風
- 落雷
- 水害
- 第三者への損害
などのリスクは、誰も住んでいないからなくなるわけではありません。
むしろ、日常的に人がいないため、異常に気付くのが遅れることもあります。
相続した実家が空き家になる場合には、現在加入している保険会社や代理店へ、
「空き家になってもこの契約内容で問題ないか」
を確認しておくと安心です。
庭木・雑草・敷地の管理費
戸建ての実家では、庭や敷地の管理も必要です。
人が住まなくなったからといって、雑草や庭木の成長が止まるわけではありません。
放置すると、
- 雑草が伸びる
- 庭木の枝が道路や隣地へはみ出す
- 落ち葉が周囲へ飛ぶ
- 害虫が発生する
- 外から見て長期間不在だと分かりやすくなる
といった問題につながることがあります。
自分で定期的に手入れできれば大きな費用はかからないこともありますが、造園業者や管理会社へ依頼する場合には、その費用も維持費として考えておく必要があります。
建物の修繕費
空き家でも建物は少しずつ劣化します。
たとえば、
- 雨漏り
- 屋根や外壁の破損
- 雨どいの故障
- 給排水設備の不具合
- 木部の腐食
- シロアリ被害
などです。
特に空き家は、普段生活している人がいないため、小さな異常を発見するのが遅くなりやすい点に注意が必要です。
小さな雨漏りであれば早い段階で修理できたものが、数年間放置した結果、柱や床まで傷んで大掛かりな修繕が必要になることも考えられます。
水道・電気などを残す場合の費用
空き家だからといって、すべてのライフラインをすぐに解約するとは限りません。
定期的に清掃をしたり、通水したり、照明を使ったりするために、
- 水道
- 電気
などを残すケースもあります。
使用量が少なくても基本料金が発生することがあります。
一方で、すべて解約すると管理の際に不便になることもあるため、
「今後どれくらいの頻度で管理するのか」
を考えて判断するとよいでしょう。
遠方の実家では交通費も意外と負担になります
相続した実家が自宅から離れている場合には、交通費も維持費の一つです。
たとえば、
「月に一度、実家の換気や郵便物の確認に行く」
というだけでも、車のガソリン代、高速道路料金、電車代などが発生します。
片道数時間かかる場所であれば、移動時間そのものも負担になります。
最初の数か月は問題なくても、それを何年も続けるとなると、
「自分たちで管理し続けるのが現実的なのか」
を考える必要が出てくるかもしれません。
空き家管理サービスを利用する方法もあります
自分で定期的に実家へ行くことが難しい場合には、空き家管理サービスを利用する方法もあります。
サービス内容は事業者によって異なりますが、
- 外から建物の状態を確認する
- 郵便物を確認する
- 室内を換気する
- 通水する
- 雨漏りなどを確認する
- 庭や敷地の状態を確認する
といった管理を依頼できる場合があります。
もちろん委託費用はかかりますが、
「遠方に住んでいて毎月実家へ行くのが難しい」
という場合には、自分で管理する時間や交通費と比較して検討してみてもよいでしょう。
空き家の年間維持費はどれくらい?
実際の費用は物件によって大きく違うため、一律に「年間○万円」と決めることはできません。
ただ、維持費を整理するときは、次のような項目を一度書き出してみると分かりやすくなります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年の納税通知書を確認 |
| 保険料 | 火災保険等の契約内容を確認 |
| 水道・電気 | 基本料金や使用状況を確認 |
| 庭・敷地管理 | 草刈り、剪定、清掃等 |
| 修繕費 | 屋根、外壁、設備等 |
| 交通費 | 実家へ管理に行く費用 |
| 管理委託費 | 管理会社を利用する場合 |
| その他 | 自治会費など物件ごとの費用 |
大切なのは平均額と比べることよりも、自分の実家を今後3年、5年と所有した場合にどのくらいの負担になるのかを考えることです。
「とりあえず空き家のまま」にする前に考えておきたいこと
相続が発生した直後に、実家をどうするかすぐ決められないのは珍しいことではありません。
思い出のある家であれば、
「今すぐ売るという判断はしたくない」
という気持ちになることもあるでしょう。
そのため、一定期間空き家として所有すること自体が悪いわけではありません。
ただし、
「決められないから、そのまま何年も放置する」
状態になることは避けたいところです。
まずは、
- 年間の維持費はいくらか
- 誰が管理するのか
- 家族の誰かが将来使う可能性はあるか
- 賃貸にできる可能性はあるか
- 売却する場合はどのような条件になりそうか
などを整理してみましょう。
数字や選択肢を整理することで、「もう少し残しておく」「賃貸を検討する」「売却を考える」といった判断もしやすくなります。
相続した実家がまだ亡くなった親などの名義のままになっている場合は、 相続登記の状況も確認しておきましょう。 相続登記の期限や義務化については、
「相続登記はいつまで?義務化と2027年3月31日の期限をわかりやすく解説」 で詳しくご紹介しています。
相続した実家をどうするか迷っている方へ
相続した実家には、
- 住む
- 貸す
- 売る
- 残す
など、さまざまな選択肢があります。
空き家の維持費だけを見て「すぐ売却した方がいい」と判断する必要はありません。
ご家族の希望や不動産の状態、立地、維持費、今後の利用予定などを整理したうえで考えることが大切です。
相続した実家を今後どうするかについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
関連記事:
相続した実家はどうすればいい?売る・貸す・住む・残す選択肢をわかりやすく解説
まとめ|空き家は「持っているだけ」の費用も確認しておきましょう
相続した実家を空き家として所有する場合には、固定資産税だけでなく、
- 保険料
- 庭や敷地の管理費
- 修繕費
- 水道・電気
- 交通費
- 管理委託費
など、さまざまな費用がかかる可能性があります。
また、管理状態が悪化して市区町村から勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税の軽減措置を受けられなくなる可能性もあります。
「まだどうするか決められない」という場合でも、まずは現在かかっている維持費と、今後必要になりそうな費用を一度整理してみましょう。
和継プランニングでは、相続・空き家・不動産についてのご相談を承っています。
売却だけを前提にするのではなく、実家を残す・貸す・活用するなどの可能性も含め、現在の状況やご家族の希望を整理しながら今後の選択肢を一緒に考えます。
必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携しますので、神奈川県央・湘南周辺で相続した実家や空き家についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年9月時点の制度や公表資料をもとに、一般的な内容を解説したものです。税額や制度の取り扱い、必要な管理内容は不動産や地域、個別の状況によって異なります。具体的な税務判断については税理士、法律上の判断については弁護士等の専門家へご確認ください。

この記事を書いた人
和継プランニング 代表 宮澤 和希
宅地建物取引士/FP2級・AFP
不動産会社で不動産売却のご相談や売買仲介業務に携わってきた経験をもとに、相続不動産・空き家・不動産売却について、一般の方にもわかりやすい情報発信を行っています。
「売ること」だけを前提にせず、ご家族の状況や今後の希望を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携し、解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
