親から実家を相続したものの、誰も住む予定がなく、
「とりあえず空き家のままにしている」
「忙しくてなかなか管理に行けない」
「すぐに売る予定はないので、そのままでも大丈夫だろう」
という方もいらっしゃると思います。
しかし、空き家は人が住まなくなると、少しずつ建物や敷地の状態が変化していきます。
長期間放置すると、建物の劣化だけでなく、雑草や庭木、害虫、不法侵入、近隣への影響など、さまざまな問題につながる可能性があります。
さらに、管理状態によっては市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導・勧告の対象となり、固定資産税の住宅用地特例に影響することもあります。
この記事では、空き家を放置するとどのようなリスクがあるのか、「管理不全空家」とは何なのか、そして空き家を相続した場合にどのような対策を考えればよいのかをわかりやすく解説します。
空き家は「誰も住んでいないだけ」ではない
人が住んでいる家では、
- 窓を開けて換気する
- 水道を使う
- 雨漏りや故障に気づく
- 庭や雑草を手入れする
- 郵便物を確認する
といったことが日常的に行われています。
ところが空き家になると、こうした日常的な管理が行われなくなります。
その結果、建物の小さな異変に気づくのが遅れたり、庭木や雑草が伸び続けたりして、徐々に状態が悪化することがあります。
空き家は「使っていないから何もしなくてよい不動産」ではなく、所有している間は一定の管理が必要な不動産と考えておくことが大切です。
空き家を放置すると起こりやすいこと
空き家を長期間管理せずにいると、さまざまな問題が発生する可能性があります。
1.建物の劣化が進む
まず考えられるのが、建物そのものの劣化です。
たとえば、
- 屋根の破損
- 外壁のひび割れ
- 雨漏り
- 木部の腐食
- 給排水設備の劣化
- シロアリ被害
などです。
人が住んでいれば早い段階で気づける異常でも、空き家では数か月、数年と気づかないまま進行することがあります。
結果として、本来なら小さな修繕で済んだものが、大規模な修繕につながる場合もあります。
2.屋根材や外壁が落下する可能性がある
建物の劣化が進むと、屋根材や外壁などが落下する危険性も高まります。
道路や隣地に面した建物の場合には、通行人や近隣住宅へ影響する可能性もあります。
台風や強風の際に、劣化した屋根材や建材が飛散するケースも考えられます。
空き家だからといって、建物の管理責任までなくなるわけではありません。
3.雑草や庭木が伸びる
戸建ての空き家で特に目立ちやすいのが、庭や敷地の問題です。
放置すると、
- 雑草が伸びる
- 庭木の枝が隣地へ越境する
- 枝が道路へはみ出す
- 落ち葉が周辺へ飛ぶ
などの問題が起きることがあります。
最初は小さな問題でも、管理されない期間が長くなると近隣トラブルにつながることがあります。
4.害虫や動物の問題が起きることがある
人の出入りが少なくなると、害虫や小動物などが住みつくこともあります。
ねずみや害虫などが発生すれば、衛生面の問題だけでなく、周辺住宅へ影響する可能性もあります。
建物の隙間や壊れた部分から動物が入り込み、内部を傷めるケースも考えられます。
5.不法侵入や防犯面のリスクが高まる
長期間人が住んでいないことが外から分かる状態になると、防犯面でも注意が必要です。
たとえば、
- 郵便物が大量にたまっている
- 庭が荒れている
- 窓や雨戸が壊れている
- 長期間人の出入りがない
といった状態は、空き家であることが分かりやすくなります。
不法侵入や不法投棄などにつながる可能性もあるため、定期的な確認が大切です。
6.資産価値にも影響する可能性がある
建物の劣化が進めば、将来売却や賃貸を考えたときに、そのまま利用することが難しくなることがあります。
修繕費が増えたり、建物を解体する必要が出てきたりすれば、売却時の条件にも影響する可能性があります。
「今は使わないけれど、将来売るかもしれない」
という場合でも、適切に管理しておくことには意味があります。
「管理不全空家」とは?
空き家について知っておきたい言葉の一つが、「管理不全空家」です。
2023年12月に施行された改正空家法により、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば「特定空家」になるおそれがある空き家について、市区町村が「管理不全空家」として指導・勧告を行える仕組みが設けられました。
つまり、建物が倒壊寸前になるなど深刻な状態になってからではなく、その一歩手前の段階から改善を求める仕組みです。
管理状態が悪化しているからといって、すぐにすべての空き家が管理不全空家になるわけではありません。
市区町村が建物や敷地の状態などを確認し、法令やガイドラインなどに基づいて判断します。
「特定空家」とは何が違う?
管理不全空家よりさらに状態が悪化し、周囲へ大きな悪影響を及ぼしている空き家などは、「特定空家」として対応の対象となることがあります。
たとえば、
- 倒壊など保安上危険な状態
- 衛生上有害となるおそれがある状態
- 著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境を守るため放置することが不適切な状態
などが判断の対象になります。
簡単に整理すると、
管理不全空家:放置すれば特定空家になるおそれがある段階
特定空家:すでに周囲へ大きな悪影響を及ぼしている、またはそのおそれが高い段階
と考えるとイメージしやすいでしょう。
管理不全空家になると、すぐ固定資産税が上がる?
ここは誤解されやすいポイントです。
「管理不全空家と判断された瞬間に、必ず固定資産税が上がる」という仕組みではありません。
住宅が建っている土地には、一定の要件を満たす場合、固定資産税の課税標準を軽減する「住宅用地特例」があります。
たとえば小規模住宅用地では、200平方メートル以下の部分について、固定資産税の課税標準が原則として6分の1になります。
しかし、市区町村から管理不全空家または特定空家について勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
重要なのは、
「空き家になっただけで固定資産税が直ちに大幅に上がる」のではなく、管理状態が悪化し、市区町村から勧告を受けた場合に住宅用地特例へ影響する
という点です。
だからといって「古い家を残せば税金が安い」とは限らない
住宅用地特例があることから、
「建物を残しておけば固定資産税が安いから、壊さず放置した方がいいのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、管理せずに建物を残しておけば、
- 修繕費が増える
- 庭や建物の管理費がかかる
- 近隣への影響が生じる
- 管理不全空家等として勧告を受ける可能性がある
- 将来の売却や活用が難しくなる
といった問題が起きる可能性があります。
一方で、建物を解体すると住宅用地特例が適用されなくなる場合もあります。
そのため、「税金だけ」で建物を残す・解体するを判断するのではなく、管理費、修繕費、今後の利用、売却可能性まで含めて考えることが大切です。
空き家の管理では何をすればいい?
空き家をしばらく所有する場合には、定期的に状態を確認しましょう。
たとえば、
- 室内の換気
- 建物外部の確認
- 雨漏りの確認
- 庭木や雑草の手入れ
- 郵便物の確認
- 窓や扉の施錠確認
- 必要に応じた通水
などがあります。
自宅から遠く、自分で定期的に管理することが難しい場合には、空き家管理サービスなどを利用する方法もあります。
相続した実家を空き家として所有する場合の維持費については、こちらの記事で詳しく解説しています。
放置する前に「今後どうするか」を考えておく
相続した直後に実家をどうするか決められないことは珍しくありません。
思い出のある家であれば、すぐに売却や解体という判断ができないこともあるでしょう。
一定期間、空き家として所有すること自体が問題なのではありません。
注意したいのは、
「どうするか決められないまま、何年も管理せず放置すること」
です。
たとえば、
- 1年間は残しておく
- 半年後に家族で再度話し合う
- 維持費を確認してから判断する
- 賃貸できるか調べる
- 売却した場合の価格を確認する
といった形で、次に判断する時期や材料を決めておくとよいでしょう。
相続した家は「売る・貸す・残す」を比較する
空き家を管理することが負担になっているからといって、必ず売却しなければならないわけではありません。
相続した家には、
- 自分や家族が利用する
- 賃貸に出す
- 一定期間残しておく
- 売却する
などの選択肢があります。
維持費や建物の状態、立地、ご家族の希望などを整理したうえで比較するとよいでしょう。
売る・貸す・残すを判断するときのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続した家は売る?貸す?残す?判断するときの7つのポイント」
空き家を売却する方向性が決まったら
家族で話し合った結果、
「今後使う予定がないので売却したい」
という方向性になることもあります。
その場合には、建物がさらに傷む前に、不動産の現在の状態や売却できる価格の目安を確認してみることも一つの方法です。
和継プランニングでは、空き家・相続不動産についてのご相談に加え、売却する方向性が決まった方に向けた不動産売却専門の売買仲介サービスを行っています。
査定価格だけではなく、
- 売出価格
- 販売戦略
- 売却までの想定期間
- 必要になる費用
- 最終的な手残り
まで整理しながら売却を進めます。
相続した空き家や実家を具体的に売却したい方は、こちらの売却専門ページをご覧ください。
まだ売却するか決めていない場合には、売却を前提にする必要はありません。
まずは残す・貸す・利用する・売却するという選択肢を整理してから考えることもできます。
まとめ|空き家は「何もしない」より、まず状態を把握する
空き家を長期間放置すると、
- 建物の劣化
- 屋根材・外壁等の落下
- 雑草や庭木の問題
- 害虫や衛生面の問題
- 不法侵入などの防犯リスク
- 近隣への影響
- 将来の売却・活用への影響
などにつながる可能性があります。
また、管理状態が悪化し、市区町村から管理不全空家または特定空家について勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなる場合もあります。
空き家を相続したからといって、すぐに売却する必要はありません。
ただし、「とりあえずそのまま」にする場合でも、定期的な管理と今後の方向性の検討は必要です。
和継プランニングでは、相続・空き家・不動産について、売却だけを前提にせず、現在の状況やご家族の希望を整理しながら今後の選択肢を一緒に考えます。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度および公表情報をもとに、空き家管理について一般的な内容を解説したものです。管理不全空家・特定空家等の判断や市区町村による措置は、建物や敷地の状態、地域の状況などによって異なります。税務について具体的な判断が必要な場合には税理士、法律上の判断については弁護士などの専門家へご確認ください。
この記事を書いた人
和継プランニング 代表 宮澤 和希
宅地建物取引士/FP2級・AFP
不動産会社で不動産売却のご相談や売買仲介業務に携わってきた経験をもとに、相続不動産・空き家・不動産売却について、一般の方にもわかりやすい情報発信を行っています。
「売ること」だけを前提にせず、ご家族の状況や今後の希望を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携し、解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
