親から相続した実家について、
「売却したら、どのくらいのお金が手元に残るのだろう?」
「仲介手数料以外にも費用がかかる?」
「相続した家を売ると税金が高いって本当?」
と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
相続した実家を売却するときには、不動産会社へ支払う仲介手数料のほかにも、登記費用、印紙税、測量費、残置物撤去費用などが発生する場合があります。
また、売却によって利益が出た場合には、譲渡所得に対する税金がかかることもあります。
そのため、不動産の売却を考える際には、「いくらで売れそうか」だけではなく、「最終的にいくら手元に残るのか」まで確認しておくことが大切です。
この記事では、相続した実家を売却するときにかかる主な費用と、手残り額の考え方をわかりやすく解説します。
相続した実家を売却するときにかかる主な費用
相続した実家を売却する場合、主に次のような費用が考えられます。
- 不動産会社への仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 相続登記などの登記費用
- 土地の測量や境界確認にかかる費用
- 家具・家電などの残置物撤去費用
- 必要に応じた建物の解体費用
- 売却による利益に対する税金
ただし、これらの費用がすべての不動産売却で必要になるわけではありません。
マンションなのか戸建てなのか、相続登記が済んでいるのか、建物を解体するのかなどによっても異なります。
まずは、それぞれの費用について確認していきましょう。
1.不動産会社へ支払う仲介手数料
不動産会社へ仲介を依頼して売却が成立した場合、一般的には仲介手数料が発生します。
仲介手数料には、法律に基づく上限額が定められています。
売買価格が400万円を超える一般的な不動産売買では、原則として次の速算式で上限額を計算できます。
仲介手数料の上限額(税込)=(売買価格×3%+6万円)×1.1
たとえば、相続した実家を3,500万円で売却した場合には、
3,500万円×3%+6万円=111万円
111万円×1.1=122万1,000円
となります。
つまり、この場合の仲介手数料の原則的な上限額は122万1,000円(税込)です。
ただし、これはあくまで法律に基づく上限額であり、必ずその金額を支払わなければならないという意味ではありません。
実際の仲介手数料は、不動産会社との契約内容によって異なります。
また、売買価格が800万円以下の不動産については、特例により仲介手数料の上限額が異なる場合があります。
媒介契約を締結する前に、実際にいくらかかるのか確認しておきましょう。
2.売買契約書にかかる印紙税
不動産を売却するときには、売主と買主で売買契約を締結します。
紙の売買契約書を作成する場合には、契約金額などに応じて印紙税がかかります。
2026年10月時点では、不動産の譲渡に関する一定の契約書について印紙税の軽減措置が設けられています。
たとえば、記載された契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、軽減措置が適用される契約書1通あたりの印紙税は1万円です。
実際の負担は、契約書の作成方法や保管する通数などによって異なります。
なお、電子契約の場合には、紙の課税文書を作成しないため、通常は印紙税がかかりません。
3.相続登記などの登記費用
相続した実家が、まだ亡くなった親の名義になっている場合には、相続登記が必要になります。
相続登記には、登録免許税や司法書士へ手続きを依頼する場合の報酬などがかかることがあります。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額などをもとに計算されます。
また、相続登記以外にも、
- 住宅ローンの抵当権が残っている場合の抹消登記
- 登記上の住所や氏名を変更する必要がある場合の手続き
などが必要となる場合があります。
具体的な費用や必要な登記については、不動産の登記状況を確認したうえで司法書士へ相談するとよいでしょう。
相続登記の期限や義務化については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
「相続登記はいつまで?義務化と2027年3月31日の期限をわかりやすく解説」
4.土地の測量・境界確認にかかる費用
戸建てや土地を売却する場合には、土地の境界について確認することがあります。
たとえば、
- 隣地との境界が分からない
- 境界標が見当たらない
- 古い測量図しか残っていない
- 土地の面積を確認する必要がある
といったケースです。
このような場合には、土地家屋調査士による測量などが必要になることがあります。
測量費用は土地の面積や形状、隣地の状況、必要な測量の内容などによって異なります。
一方で、すでに必要な測量資料が揃っている場合や、売買条件によっては新たな測量を行わないケースもあります。
そのため、売却を始める前に、測量が必要なのか、不動産会社へ確認しておくとよいでしょう。
5.家具・家電などの残置物撤去費用
相続した実家では、親が使用していた家具や家電、日用品などが残っていることも珍しくありません。
たとえば、
- タンスやベッド
- 冷蔵庫や洗濯機
- 食器や調理器具
- 衣類や布団
- 物置に残っている荷物
などです。
売却条件によっては、引渡しまでにこうした荷物を撤去する必要があります。
家財が多い場合には、専門業者へ片付けを依頼することも考えられます。
ただし、査定を依頼する前に、すべての荷物を処分する必要はありません。
まずは現在の状態を確認してもらい、どのような売却方法が考えられるのか相談してから判断してもよいでしょう。
思い出の品や重要書類が残されている場合もありますので、処分を急がず、必要なものを整理しながら進めることが大切です。
6.建物の解体費用が必要になることも
築年数が古い実家では、
「建物を解体して更地にした方が売れるのでは?」
と考える方もいらっしゃいます。
確かに、土地として売却する場合には、建物の解体を検討するケースもあります。
ただし、解体費用は、建物の構造や大きさ、立地、廃材処分の状況などによって大きく異なります。
また、建物が残っている状態で購入したい方が見つかる可能性もあります。
そのため、売却前に必ず解体しなければならないわけではありません。
解体することで土地の固定資産税の住宅用地特例に影響する場合もあります。
建物を残したまま売るのか、解体して売るのかは、売却価格や費用、買主の需要などを比較したうえで判断することが大切です。
7.売却によって利益が出た場合の税金
相続した実家を売却した場合、売却によって利益が出ると、譲渡所得に対して所得税や住民税がかかることがあります。
ただし、売却価格の全額が利益として計算されるわけではありません。
基本的には、
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
という考え方で計算します。
取得費とは、その土地や建物を購入したときの費用などです。
相続した不動産の場合は、原則として亡くなった親などの被相続人が取得したときの取得費を引き継ぎます。
また、譲渡費用には、売却のために直接かかった仲介手数料や一定の測量費などが含まれます。
一方で、通常の維持管理費や固定資産税などは、原則として譲渡費用には含まれません。
取得費が分からない場合には、一定の条件で売却価格の5%相当額を概算取得費とする方法が認められています。
税金の計算は複雑になることもあるため、売却前に税理士などへ確認しておくと安心です。
相続した空き家には3,000万円の特別控除が使える場合も
相続した実家を売却する際に知っておきたい制度の一つが、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」です。
一定の要件を満たす場合には、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。
ただし、2024年1月1日以後の譲渡について、対象となる家屋や敷地等を取得した相続人が3人以上の場合には、控除額の上限は2,000万円となります。
また、この特例には、
- 対象となる建物の建築時期
- 相続前の居住状況
- 相続後の利用状況
- 売却する時期
- 売却価格
- 耐震基準や解体に関する条件
など、さまざまな要件があります。
相続した空き家なら必ず適用できるわけではありません。
2026年10月時点では、制度の対象期間は2027年12月31日までとされていますが、個々の物件については別途、相続開始からの売却期限などの要件も確認する必要があります。
適用を検討する場合には、売却前に税理士などへ確認しておくことをおすすめします。
3,500万円で売却した場合、いくら手元に残る?
ここまで説明した内容をもとに、簡単な例で考えてみましょう。
相続した実家を3,500万円で売却し、一般的な仲介手数料の原則上限額が適用される場合を想定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,500万円 |
| 仲介手数料(税込・原則上限額) | 122万1,000円 |
| 印紙税(軽減措置適用、紙の契約書1通) | 1万円 |
| 差引額 | 3,376万9,000円 |
この例では、仲介手数料と印紙税を差し引いた金額は3,376万9,000円となります。
ただし、これはあくまで簡略化した計算例です。
実際には、相続登記費用、測量費、残置物撤去費用、解体費用などが必要になる場合があります。
さらに、住宅ローンなどの借入金が残っている場合には、その返済も考慮する必要があります。
譲渡所得に対する税金が発生する場合もあります。
したがって、この金額が最終的な手残り額になるとは限りません。
売却前の段階で、どのような費用が必要になるのかを整理しておくことが大切です。
手残り額を確認してから売却を考えることが大切
不動産売却では、査定価格が高いほどよいと考えがちです。
しかし、実際に売却する際には、
- いくらで売り出すのか
- どのくらいの期間で売却したいのか
- どのような販売方法をとるのか
- 必要な費用はいくらか
- 売却後の手残りはいくらになりそうか
まで含めて考える必要があります。
たとえば、建物を解体するかどうか、測量を行うかどうかによっても必要な費用が変わります。
売却方法を検討する段階で、必要な費用と売却価格の見込みを比較しておくと、判断しやすくなります。
和継プランニングでは、売主様のための不動産売却専門の売買仲介サービスを行っています。
査定価格だけではなく、売出価格、販売戦略、売却期間、必要な費用、最終的な手残りまで整理しながら売却を進めます。
相続した実家や土地の売却を具体的に検討している方は、売却専門ページをご覧ください。
まだ売却するか決めていない場合は?
相続した実家について、売却を検討しているものの、まだ決めきれない方もいらっしゃると思います。
実家には、売却以外にも、
- 自分や家族が住む
- 賃貸に出す
- 一定期間所有する
- 将来の利用に備えて残す
といった選択肢があります。
売却価格の目安や必要な費用を確認したうえで、保有や賃貸と比較することも一つの方法です。
売る・貸す・残すを判断するときのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続した家は売る?貸す?残す?判断するときの7つのポイント」
相続した実家の売却を進めるときは
相続した実家を売却する場合には、費用だけでなく、相続関係や登記の状況も確認する必要があります。
不動産会社へ査定を依頼した後は、売出価格を決め、媒介契約を締結し、販売活動、売買契約、決済・引渡しへと進んでいきます。
相続不動産を売却するまでの具体的な流れについては、こちらの記事をご覧ください。
「相続不動産を売却するまでの流れ|査定から引渡しまでわかりやすく解説」
まとめ|売却価格だけでなく、費用と手残りを確認しましょう
相続した実家を売却する際には、仲介手数料だけでなく、さまざまな費用が発生する場合があります。
主なものとしては、
- 仲介手数料
- 印紙税
- 相続登記などの登記費用
- 測量費用
- 残置物撤去費用
- 必要に応じた解体費用
- 売却益に対する税金
などがあります。
すべての売却で必要になるわけではありませんが、不動産の状態や相続の状況によって負担が大きく変わることもあります。
大切なのは、「売却価格はいくらか」だけではなく、「費用を差し引くと最終的にいくら残るのか」まで把握することです。
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なお、まだ売却するか決めていない場合には、無理に結論を出す必要はありません。ご家族の希望や不動産の状況を整理しながら、今後の選択肢を考えていきましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令・制度および一般的な不動産取引をもとに作成しています。記載した費用や計算例は目安であり、実際の費用・税額・手残り額は物件や売買条件によって異なります。税務については税理士、登記手続きについては司法書士、法律上の判断については弁護士などの専門家へご確認ください。
この記事を書いた人
和継プランニング 代表 宮澤 和希
宅地建物取引士/FP2級・AFP
不動産会社で不動産売却のご相談や売買仲介業務に携わってきた経験をもとに、相続不動産・空き家・不動産売却について、一般の方にもわかりやすい情報発信を行っています。
「売ること」だけを前提にせず、ご家族の状況や今後の希望を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携し、解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
