親が亡くなり、兄弟など複数の相続人がいる場合、
「実家は誰が相続するの?」
「兄弟で半分ずつにしなければいけない?」
「誰も住まないなら、売って分けることはできる?」
と迷うことがあります。
預貯金であれば金額に応じて分けることを考えやすい一方、家や土地などの不動産は簡単に分けることができません。
そこで重要になるのが、相続人同士で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」です。
この記事では、遺産分割協議とは何をするものなのか、実家などの不動産がある場合にはどのような分け方が考えられるのか、注意したいポイントとあわせてわかりやすく解説します。
遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、亡くなった方が残した財産を、相続人の間でどのように分けるのか話し合うことです。
相続人が複数いる場合、遺産分割がまとまるまで、遺産は相続人同士の共有状態となります。
そのため、
- 実家を誰が取得するのか
- 預貯金をどのように分けるのか
- 土地や株式などを誰が取得するのか
などについて話し合っていきます。
遺産分割協議を成立させるためには、原則として相続人全員の合意が必要です。
一部の相続人だけで話を進めるのではなく、まずは誰が相続人なのかを正しく確認することが大切です。
話し合いがまとまった場合には、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残し、不動産の相続登記や金融機関での相続手続きなどに使用することがあります。
まずは相続人と相続財産を確認する
遺産分割協議を始める前に、まず確認しておきたいのが、
- 誰が相続人なのか
- どのような相続財産があるのか
という2点です。
相続人については、戸籍などを確認して範囲を確定していきます。
財産については、
- 実家や土地などの不動産
- 預貯金
- 株式・投資信託
- 自動車
- その他の財産
- 借入金などの債務
などを整理します。
親が亡くなった後の相続手続き全体の流れについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
「親が亡くなったらまず何をする?相続手続きの流れと期限をわかりやすく解説」
実家がある場合、どのように分ける?
相続財産に実家などの不動産がある場合、
「兄弟が相続人だから、兄弟全員の共有名義にする」
と決まっているわけではありません。
ご家族の状況や希望に応じて、主に次のような方法が考えられます。
1.一人が実家を取得する
まず考えられるのが、相続人の一人が実家を取得する方法です。
たとえば、
「長男が今後も実家に住む」
という場合には、長男が実家を取得し、ほかの相続財産とのバランスを見ながら分け方を考える方法があります。
実家を一人の名義にできれば、その後の管理や利用、将来売却するときの意思決定もしやすくなります。
ただし、実家の価値が相続財産の大部分を占める場合には、ほかの相続人との公平性をどのように考えるかが問題になることがあります。
2.一人が実家を取得し、ほかの相続人へ金銭を支払う
実家を一人が取得し、その代わりにほかの相続人へ金銭を支払って調整する方法もあります。
このような方法は一般に「代償分割」と呼ばれます。
たとえば、相続人が兄と弟の2人で、兄が実家を取得する場合に、財産全体の内容を踏まえて兄から弟へ一定の金銭を支払う、といった方法です。
実家を残しながら共有状態を避けられる場合がある一方、実家を取得する人に代償金を支払う資金が必要になります。
また、実際にどの程度の金額で調整するのかについては、ほかの相続財産や不動産の評価、相続人同士の合意などによって異なります。
3.実家を売却して、売却代金を分ける
誰も実家に住む予定がない場合には、不動産を売却し、その代金を相続人で分ける方法もあります。
このような方法は一般に「換価分割」と呼ばれます。
不動産そのものではなく、お金に換えてから分けるため、相続人同士で分配しやすくなる場合があります。
ただし、不動産を売却する際には、状況によって、
- 仲介手数料
- 登記に関する費用
- 測量費用
- 残置物の撤去費用
- 建物の解体費用
- 売却に伴う税金
などが発生することがあります。
そのため、単純に売却価格だけを見るのではなく、売却に必要な費用を差し引いた後に、いくら手元に残るのかまで確認しておくことが大切です。
相続不動産を売却するまでの流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続不動産を売却するまでの流れ|査定から引渡しまでわかりやすく解説」
4.兄弟など複数人の共有名義にする
実家を兄弟など複数の相続人で共有する方法もあります。
たとえば、兄と弟がそれぞれ2分の1ずつ所有する形です。
「今すぐ実家をどうするか決められない」
という場合には、共有名義を選択することもあるでしょう。
ただし、共有名義にすると、その後の管理や売却などについて共有者同士で話し合う場面が増えます。
さらに、共有者の一人が亡くなると、その人の持分が次の相続の対象となり、将来的に共有者が増える可能性もあります。
そのため、明確な理由がないまま「とりあえず共有」にする場合には、その後の管理や将来の売却まで考えておくことが重要です。
兄弟で実家を相続する場合の共有名義については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「兄弟で実家を相続するとどうなる?共有名義の注意点をわかりやすく解説」
実家の価値が分からないと分け方を考えにくいことも
遺産分割を考えるときに、意外と難しいのが不動産の価値です。
たとえば、兄弟の間で、
「実家は2,000万円くらいでは?」
「いや、3,000万円くらいするのでは?」
と認識が違えば、ほかの財産とのバランスについても話し合いにくくなります。
固定資産税評価額と、実際に不動産市場で売却できる価格は同じとは限りません。
そのため、実家を誰が取得するのか、売却するのかなどを考える際には、現在の不動産市場でどの程度の価格が考えられるのかを査定で確認する方法もあります。
査定を受けたからといって、必ず売却する必要はありません。
「遺産分割を考えるための判断材料として、実家の市場価格の目安を知る」という利用方法もできます。
実家をどうするかは、将来まで考えて話し合う
遺産分割では、
「今回、誰が実家を取得するか」
だけではなく、その後についても考えておくことが大切です。
たとえば、
- 誰かが今後住む予定はあるか
- 誰も住まない場合は誰が管理するか
- 固定資産税や修繕費を誰が負担するか
- 5年後、10年後も所有する予定なのか
- 将来的に売却する可能性はあるか
などを整理してみましょう。
「実家だから残した方がよい」
「空き家だからすぐ売った方がよい」
と最初から結論を決める必要はありません。
ご家族の希望、維持費、不動産の状態、賃貸できる可能性、売却した場合の価格などを整理しながら比較することが大切です。
売る・貸す・残すを判断するときのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
「相続した家は売る?貸す?残す?判断するときの7つのポイント」
遺産分割協議がまとまったら相続登記も確認する
遺産分割協議によって実家を取得する人が決まった場合には、相続登記についても確認しましょう。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
遺産分割によって不動産を取得した場合には、原則として、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を反映した登記を申請する必要があります。
また、相続登記の基本的な申請義務についても期限があります。
相続登記の期限や、2024年4月より前に発生した相続についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
「相続登記はいつまで?義務化と2027年3月31日の期限をわかりやすく解説」
具体的な登記手続きについては、司法書士へ相談するとよいでしょう。
相続開始から10年を過ぎると遺産分割できなくなる?
遺産分割について、
「相続から10年経つと、もう遺産分割ができなくなる」
と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、単純に10年を過ぎたら遺産分割そのものができなくなるという制度ではありません。
2023年4月から、相続開始から10年を経過した後の遺産分割については、原則として、生前贈与や被相続人への特別な貢献などを反映した「具体的相続分」ではなく、法定相続分または遺言による指定相続分を基準として遺産分割を行うルールが導入されています。
なお、相続人全員が合意する場合などには取扱いが異なることもあり、2023年4月より前に開始した相続については経過措置もあります。
長期間そのままにしている相続については、自己判断せず専門家へ確認することをおすすめします。
また、遺産分割を長期間行わないままにすると、その間に相続人が亡くなり、次の相続が発生して関係する人が増えることもあります。
実家などの不動産がある場合には、将来の管理や処分も考えて、できるだけ早い段階で方向性を話し合っておくとよいでしょう。
話し合いがまとまらない場合は?
相続人同士で話し合っても、遺産の分け方について合意できないことがあります。
たとえば、
「自分が実家を取得したい」
「売却してお金で分けたい」
「思い出があるので実家を残したい」
など、相続人によって考えが異なるケースです。
相続人同士の話し合いで遺産分割がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。
調停では、裁判官や調停委員を交えて話し合いによる解決を目指します。
調停でも話し合いがまとまらない場合には、審判手続へ進むことがあります。
相続人同士で意見が対立している場合や、具体的な法律判断が必要な場合には、弁護士などの専門家へ相談することを検討しましょう。
遺産分割の結果、実家を売却することになったら
相続人同士で話し合った結果、
「誰も住む予定がないので実家を売却しよう」
という結論になることもあります。
和継プランニングでは、相続・空き家についてのご相談に加えて、売却する方向性が決まった方に向けた、不動産売却専門の売買仲介サービスを行っています。
単に査定価格をお伝えするだけではなく、
- 現在の不動産の状況
- いくらで売り出すか
- どのような販売戦略をとるか
- どのくらいの売却期間を想定するか
- どのような費用がかかるか
- 最終的にいくら手元に残りそうか
まで整理しながら売却を進めます。
相続した実家や土地を売却する方向性が決まった方は、こちらの売却専門ページをご覧ください。
まだ売却すると決めていない場合には、売却を前提にする必要はありません。
残す・利用する・貸す・売却するなどの選択肢や、それぞれの費用・負担を整理してから考えることもできます。
まとめ|実家の遺産分割は「今」だけでなく将来まで考えましょう
実家などの不動産がある遺産分割では、主に、
- 一人が実家を取得する
- 一人が取得し、ほかの相続人へ金銭を支払う
- 実家を売却して代金を分ける
- 複数の相続人で共有する
などの方法が考えられます。
どの方法が適しているかは、不動産の価値、ほかの相続財産、ご家族の希望、今後の利用予定などによって異なります。
大切なのは、「今回どう分けるか」だけではなく、その実家を5年後、10年後にどうしたいのかまで考えることです。
和継プランニングでは、相続・空き家・不動産について、売却だけを前提にせず、現在の状況や選択肢を整理するところからご相談を承っています。
遺産分割を考える材料として実家の市場価格を確認したい場合や、売却した場合の費用・手残りを知りたい場合にもご相談いただけます。
遺産分割の具体的な法律判断、相続人間での争いなどについては弁護士、登記については司法書士、税務については税理士など、内容に応じた専門家へのご相談が必要となる場合があります。
※本記事は2026年9月時点の法令・制度をもとに、遺産分割と相続不動産について一般的な内容を解説したものです。相続人の範囲、相続分、遺言の内容、遺産分割の方法などは個別の状況によって異なります。具体的な法律判断については弁護士、登記手続きについては司法書士、税務については税理士などの専門家へご確認ください。
この記事を書いた人
和継プランニング 代表 宮澤 和希
宅地建物取引士/FP2級・AFP
不動産会社で不動産売却のご相談や売買仲介業務に携わってきた経験をもとに、相続不動産・空き家・不動産売却について、一般の方にもわかりやすい情報発信を行っています。
「売ること」だけを前提にせず、ご家族の状況や今後の希望を整理しながら、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士などの専門家とも連携し、解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
